「越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文」から

自分の勉強用に「越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文」という本を読みました。

 

英語の勉強になったのは勿論ですが、219ページに書かれている「読者へのメッセージ」が、非常に印象に残りました。

 

「なぜ勉強するのか?」という問いに対する、1つの素晴らしい回答だと思うので、引用・紹介します。

 

 

翻訳学校で教えていて、ひとつ感じることがあります。合格したかどうかはともかく、かつて大学受験などの大きな試験に向けて本格的に勉強した人とそうでない人とのあいだには、翻訳学校にかよいはじめたあとでもやっぱり明確な差が表れてくるんです。翻訳するには、単語だけではなくていろいろな背景も調べる必要があるわけですが、受験勉強をしっかりやった経験のある人は、「ここまでは調べなければならない」という追求の度合いが深い。結果として、そうでない人との差がますますひろがってしまうんですね。

たとえば、ひとつの単語集を覚えるには、そうとうな労力が要ります。それこそ、忘れて覚えての繰り返し。でも、その過程で得たさまざまな蓄積というのは、なにか新しいことをやろうとしたときにかならず生きてきます。なぜかというと、どういう作業が必要か、どれほど苦しいか、どれだけ時間がかかるか、そういったことを頭と体で知っているから。同時に、すでにひとつやり終えているので、どんなに大変であろうとも"やり切る自信"はあるわけです。労力に対する"免疫"や"耐性"と言ってもいいかもしれない。

それともうひとつ、人間はいかに忘れやすい生き物であるか、いかに怠けやすい動物であるか、自分がいかに愚かであるかを、体験的に知っている。これは大きいですよ。謙虚な気持ちを忘れずに学習に取り組める、という意味でね。

受験勉強にかぎらず、ある一定期間、何かについて徹底的に勉強した経験は、つぎに新しいことを学ぼうとするときに大きなアドバンテージになります。だからもし、これから英語をきちんと勉強しようと思われているかたがいるなら、それは英語を学ぶにとどまらない意味があるんだということを、ぜひ心に留めておいてほしいですね。